●寝るのが早かったせいか、6時前に起床。ざぶんと温泉に入り、しゃっきりした後は朝ごはんです。今回の旅行の楽しみのひとつが自炊でした。自炊設備のある宿に泊まるのは初めてだったのです。自分の部屋の向かい側にある自炊スペースに行くと、昨日会った管理人のおばあちゃんが自分の朝食をお盆に並べています。昨日寒くなかった?とか、お風呂や電気の場所はわかった?など色々気遣ってくれ、ガスの使い方を教えてくれました。
●ガスは50円玉を入れると10分くらい使えるタイプで、昨日のシジミで潮汁を作り、スーパーで買った宮城県産ホヤの塩辛とごはんで朝食にしました。普通サイズを買ったけれど、シジミは大粒で、ホヤも食べやすい薄味で美味しかったです。
●ご飯を食べながら今日の計画をたてます。東北温泉へ行き、そこで昼食をとって、向山の観光農園に行って、上北町に戻って元気だったら近くの温泉銭湯に行ってみよう!とご飯の美味しさもあって、ウキウキと考えました。
●まずは東北温泉です。ネットで調べたところ日本一黒いモール泉と謳われていて、ホームページに載っている写真も光を受けた黒いお湯が魅力的でした。楽しみです。まずは汽車で上北町から乙供駅まで移動して、駅から10分程歩いた所に東北温泉がありました。駅付近は人気がなく寂しい感じでしたが、中は地元の人でにぎわっています。入浴料300円を払って中に入ると、洗い場も小さな露天風呂も常連のおばちゃんたちでいっぱいでした。お湯は薄く淹れたコーヒーのような色で少しとろみがあります。気持ちは良かったけれど人が多く落ち着かなかったのと、建物にあまり風情がなかったせいか、昨日の姉戸川温泉の感動が大きかったこともあって、ここはあまり心に残りませんでした。残念…。
●東北温泉の「黒づくし御膳」を食べて移動する予定でしたが、何となく気が乗らず汽車の時間を待って、向山へ。
●向山に到着すると、何やら駅舎付近がかわいらしい事になっています。小さな無人駅の駅舎の隣には、小さくてかわいい汽車と「おらんどの里 向山駅ミュージアム」と木で書かれている建物がありました。カーテンがかかっていて中は見えませんが、窓に所に駅の看板や色紙、雑誌の記事の切り抜きや、向山駅愛好会活動応援寄付金募集中と書かれたチラシが飾られていました。
●帰りの汽車を待つ時にでも中を見てみようと思いながら、つぎの目的地へとへ向かいます。駅付近には特にお店もなく、人気のない道をひたすら歩くと「アグリの里おいらせ」に到着。アグリの里おいらせは、レストランや土産物屋、熱帯果樹園やいちごのビニールハウスがある観光農園です。ここのいちご狩りは開店直後の一番いい時間帯は予約制です。一週間前に予約の電話をしたら2週間先まで予約でいっぱいでした。もう昼近くなのでどうかなぁ…と思っていちごのビニールハウスに行ってみると、若干いちごの数が少ないという事で、いちご摘み体験を勧められました。渡されたハサミを手に、早速いちごの所へ。数が少ないと言われましたが、赤く熟れたイチゴは十分にあります。30分食べ放題のいちご狩りでも良かったな、と思いながらいちごをひとつずつ摘み取ってプラスチックの箱に入れていきます。いちご摘み体験は、100g200円の量り売りでした。300gほどのいちごを手に、次は昼食です。
●ランチバイキングをやっているオシャレなレストランがあったので、そこで食べようと思ってましたが、びっくりするほど混んでいます。店の外からレジ前のイスには順番待ちの人たちがぎっしりと座っているのが見えます。とても並んで食べる気にはなれず、レストランを素通りしてお昼ご飯を探します。物産館や直売所は、それぞれ建物が独立しており、移動するには外に出る必要があります。焼き鳥や餅を売っている屋台がありましたがやっぱり混んでいます。色々見て回っているうちにぱらぱらと雨が降ってきました。寒さもあいまって、ちょっと悲しい気持ちになっていると、食工房あぐりと書かれた蕎麦屋を見つけました。ここも混んでましたがレストランほどではなかったので、かけそばを350円を注文。おにぎりやゆで卵は売り切れていたのが残念だったけど、温かいものが食べられるのは嬉しいなと待っていたけれどもなかなか蕎麦が来ません。よく見ると、私の前に来ていたお客さんも何組か蕎麦を待っています。30分弱くらいでようやく蕎麦が到着。十割蕎麦で、腹ぺこだった事もあり美味しかったです。同じ建物に足湯があったので、足湯につかりつつ先程のいちごをつまむと、いちごが甘い!
●ぱくぱくと半分くらい食べてしまいました。やっぱり摘み取り体験ではなくて、いちご狩りにすれば良かった。最初は空いていましたが、だんだんと足湯が混んで来たので、最後に物産館や直売所を覗いて農園を後にしました。雨に濡れるのを覚悟してバスタオルを被って外に出ましたが、幸い雨は止んでいます。
●寒いのでバスタオルを被ったまま、早足で駅に向かいます。すっぽりと頭はバスタオルで覆われ、イヤホンでカッパ寄席で購入した鈴々舎馬るこのCDを聴きながら時々笑いながら歩いているので、側から見たらきっと変な人です。でも人気がないのでへっちゃらです。アグリの里はあんなに混んでいたのに、周辺に人がいないのが変な感じです。
●駅に着いたのは16時半頃。駅舎の中は図書館から寄贈されたらしい本がたくさんありました。帰りに覗こうと思っていた向山駅ミュージアムは、16時閉館で入れませんでした。残念だったけど駅舎の中に向山駅ミュージアムのチラシがありました。向山町の町内会が、空き駅舎を使って旧国鉄時代の物を集めた手作り博物館を開設、現在は鉄道ファンや地域の憩いの場として時々イベントを行なっているみたいです。いいなぁと思いながら、チラシの裏を見ると駅周辺の地図と一緒に「無料レンタサイクルの申込はミュージアムの係員まで」という記載が。しまった!先にこれを見つけていたら、30分以上かけて歩いた農園までの道を、レンタサイクルを使ってすいすい行けたのに…!と大ショックでした。
●汽車に乗って上北町に戻ったのが17時過ぎ。体が芯まで冷えていたのでとりあえず宿に戻り、熱い温泉で体を温めます。近くの銭湯も行ってみる予定だったけど、外は寒いなぁと敷きっぱなしの布団でごろごろしていると、ぐったりと疲れてしまいました。もう今日は明日の予定をたてたら早々に寝てしまおうと、夕食をとるお店を探しに宿を出ました。
●居酒屋じゃなくてごはん屋さんがいい、寒いからできるだけ近くが良い、と歩き回っていると「食事処」という文字が。古風な建物に「和幸」と書いてあるお店がありました。 近くにはもう食事処はない気がしてお店に入ってみると。奥に5~6席くらいのカウンターがあり、広い個室になっている小上がりがいくつか見えました。2組程個室にお客さんが入っており、1組は宴会をしている様子、もうひと組は親戚で食事会をしているような雰囲気でした。カウンターの向こう側には板前白衣を着た店主らしき人が見えます。
●…もしかしたら、ちょっと高いお店なんじゃないだろうかと急にドキドキしながらカウンターに座りメニューを開くと、刺身盛り合わせ1500円~、きんきん焼き2300円~、小川原湖特産の天然鰻重4860円などに混じって、とろろそば650円やえび天そば860円、ハンバーグなどの定食メニューもありほっとしました。
●迷いに迷って、ノンアルコールビールを湯呑みで飲みながら野球中継を見ている寡黙そうな店主に、手こね寿司750円とシラウオ500円を注文。すると「シラウオは今日ないんですよ。沼の物ならウグイの飯寿司がありますよ」という事でウグイに変更、料理を待ちながら周囲を観察です。
●カウンターの後ろには小さな水槽があり、石の間から小さなすっぽんが顔をのぞかせています。本棚には雑誌や、日本料理やお弁当などの古いレシピ本が雑然と入っていました。こういう本、小さい頃にうちにもあったなぁと思っていると「飯寿司は歯ごたえのある物と、柔らかい物とどちらが良いですか?」と聞かれ「歯ごたえのある方で」と言うと「皮を炙ったら柔らかくなるんだけど、時々常連さんに柔らかすぎるって言われるんですよ。あ、飯寿司は好きい嫌いが分かれるけど大丈夫ですか?」と話してくれました。いい人だぁ。「もちろん飯寿司は大好きです!」と答えました。
●いよいよ料理が来ました。手こね寿司は酢飯の上に少し甘めのタレでヅケにした鰹と、刻んだ大葉と海苔、生姜が載っています。タレが程よくご飯に染み込んで美味しい!ウグイの飯寿司も、身がしまっているウグイが浅めに漬かっていて、皮の歯ごたえもあって、下に敷いている大葉も、ツマの大根もみずみずしくて美味しかったです。こうなると他のメニューも気になってきます。1日目からここに来ればよかった…!
●脱サラしてお店を始めたという店主は話好きだったらしく、時々宴会の人たちの注文に応じながら、一年かけて日本中をバイトしながら旅をしていたお客さんが北海道には2〜3ヶ月かけて滞在していたらしいという事や、呉服屋のボンボンの知人が若いうちに苦労をしなければ!と東京から青森まで無一文で何とか帰ってくるという事を、何十年も前にしていた事などを聞かせてくれました。
●途中で玉勝温泉に泊まりながら、姉戸川温泉や東北温泉に行ってきた話をすると、途中からカウンターで食事をしていた常連さんらしき日に焼けた青年が「温泉好きなら、すもも沢温泉がいいですよ!」と教えてくれました。上機嫌の店主が青年に「寂れた所をまわって歩いてるって、寂れた玉勝温泉とか寂れた味幸に、はっはっはっ!」と笑います。青年は「上北町の道の駅からも近いし、モール泉のお湯は評判がよくって全国から愛好家が入りに行くほどですよ~」と温泉までの地図を書いてくれました。
●ご飯は美味しかったし、良さそうな温泉も教えてもらえたし、すっかり嬉しくなって宿に帰りました。明日の予定はきまりました。すもも沢温泉に行って、どこかでお昼を取って、最後にもう一回姉戸川温泉に入ろう!