015:コスプレ大好きちさの映画日記その5・・・ミッドサマー

こんにちは。「ミッドサマー」を見た余韻で、まだぼんやりしているちさです。白昼夢から…悪夢から覚めたような、でも不思議に安らかな気分です。なにこれ。ちょっと心の整理がつかないからもう一回見たいです。上映開始からまだ5日しかたっていないのに、もうパンフレットは売り切れでした。札幌ファクトリーにも、シネマフロンティアにもない!再入荷するかなぁ…。という事で、今週は「祝祭映画」を映画館で1本、配信で1本見ました。
まずは待ちに待っていた「ミッドサマー」です。監督は昨年「ヘレディタリー/継承」で長編デビューを飾った、アリ・アスター。不幸な事件で妹と両親を亡くした大学生のダニー。鬱々とした日々を過ごしていた彼女に、恋人のクリスチャンからスゥエーデン旅行に誘われます。卒業論文のため、交換留学生である友人のパムの故郷である村「ホルガ」に行くというのです。ダニーとクリスチャンとその友人たちがホルガを訪れたのはちょうど夏至。特に今年は90年に一度の祝祭が行われる年でした。広々とした青い空に緑の芝生に咲き乱れる花々。明るく優しそうな村人たちは楽しそうに歌い踊り、太陽が沈まない夏至のホルガはまるで極彩色の楽園のよう。だけど、段々と美しい村の不穏な風習が明らかになっていき、ダニーたちも祝祭の儀式の一部になっていく…という内容です。
実はうまくいっていないダニーとクリスチャンとのぎくしゃくしたやり取りと、村の閉塞感、目の当たりにするホルガのとある凄惨な風習や一人また一人と行方が分からなくなる友人たち。元々不安定だったダニーの不安や妄想はつのるばかり。不穏な空気にだんだん耐えきれなくなってくるのですが、そんな時、まばゆいばかりのホルガの風景や、美しく笑う村人にはっと目を奪われます。ダニー(と見ている私)は、華やかな祭りと、地獄のような出来事とで次第に混乱し、翻弄されるがまま迎える祝祭のクライマックスは…!
ハッピーエンドかと言えば、必ずしもそうではありません。ただ白昼の中の地獄の先に待つ結末は不思議とすとんと安らかな気持ちになりました。不快感と緊張の果てに訪れるこの気持ち良さは何でしょう、まるで皮膚が赤くなるまでたたかれた後にそっと撫でられるような感覚でしょうか、不思議です。この感じを確かめるために、もう一回見たいです。光と色彩の洪水の中で翻弄されるのが心地よいので、できればまた映画館で観たいなぁ。他に印象に残ったのは、前半のある儀式のシーンで出て来る、澄んだアイスブルーの目のおじいちゃんです。綺麗だなぁと思ったら、ベニスに死すに出ていた美少年だったみたいです(これも見なきゃ!)
続いては「ミッドサマー」の予告を見ていて連想した「2000人の狂人(1964年)」。ミッドサマーを見る前日に配信で見ました。監督はスプラッター映画の元祖「血の祝祭日」のハーシェル・ゴードン・ルイス。アメリカ南部の村「プレザント・バレー」に迷い込んだ若者たちが、村の「100年祭」に巻き込まれていく…というお話です。
オープニングは青空と陽気なカントリーミュージック(ヒーーーーーーーハァッ!!という掛け声?が妙に耳に残ります)青年が道案内の看板の向きを変え、通りすがりの車を「プレザント・バレー」へ誘いこみます。村の入り口には「プレザント・バレー100年祭」という横断幕。車に乗っていた3組のカップルを、住民総出で歓声と共に歓迎します。ちなみにタイトルは「2000人の狂人」ですが、出て来る村人は30人くらいなのがほほえましいです。
「北部(ヤンキー)の皆さん、あなたを心待ちにしてました!あなたは特別な祭りの主賓です!」と町長が叫びます。「100年前にある歴史的事件にちなんだ祝賀行事の一部として北部の人間をもてなしている、最高のホテルと食事、それに余興で南部のおもてなしをする」と言うのです。プレザント・バレーに滞在する事なったカップルはセクシーな遊び人風のビーとジョニー、クールなデビットとビバリー、アトランタへ教師会に行くはずだったトムと車の故障で立ち往生していたトムをたまたま助けたテリーの3組。カップルたちをホテルに案内した後、住人たちは何やら悪だくみを始めます。まずは住民たちの中でもひときわ美しい男女が、色仕掛けでビーとジョニーを別々に誘いだし、草むらの中でビーを殺してしまいます。早々と退場するビーですが、色が白くて金髪でちょっと気が強そうな顔立ちがかわいかった!夜になるとバーベキューです。焚火の上で焼かれるビーのお肉を眺めながら(焼かれているのは、わかりやすい女の腕なのに誰も気がつかない!)「ジョンとビーは?」「他の男と一緒だわ」と呑気なデビットとビバリー。「100年前は南北戦争が終わった年だ、北部の人間が主賓になるのはおかしい」と不審がるトムとテリーは村のはずれで「100年前に北軍に住人は虐殺された」と復讐を誓う記念碑を見つけます。
バーベキュー後も祭りは続きます。夜の闇の中での中の競技「競馬」には捉えられていたジョニーが、翌日、青空の下での競技「樽回し」にはデビット、「グラグラ石落ちるかな?ゲーム(本当にグラグラ石って言っています)」にはビバリーが参加します。村人たちの歓声と陽気な音楽、ついでに悲鳴も絶える事がありません。実はスプラッタはそこまで得意ではありませんが、この映画は血の色も生々しくなく、人体もマネキンのように分かりやすく作りものなので平気です。
トムとテリーは村の少年をそそのかして車で逃亡を計ります。明るいカントリーミュージックをBGMに、カーチェイスというにはあまりに呑気な風情の追いかけっこが始まります。村人の「村を出てしまったらもう追いかけられない」という言葉は何故なのか、最後に明らかになるプレザント・バレーの真実とは…!(ばればれですよね)終始、手拍子に合わせて明るい音楽が流れ、ゆる~い空気が流れます。凄惨なはずの場面もどこか呑気で安心して見ていられます。ちなみに2005年に「2001人の狂宴」というタイトルでリメイクもされています。製作は「ホステル」「グリーンインフェルノ」のイーライロス、「エルム街の悪夢」のフレディ・クルーガー役でおなじみのロバート・イングランドが主演です。リメイク版は各種競技の描写も凝っていて華やかで面白く、元祖の方は牧歌的な空気とチープなスプラッターが楽しめます。
「ミッドサマー」を見た後は、不思議な安らぎはあるけれど緊張で手の先が冷たくなりましたが、「2000人の狂人」は終始リラックスして見れました。どっちも大好き💛