013:コスプレ大好きちさの映画日記その3・・・ゴールデンボーイ

こんにちは。「スタッフ通信」で前に紹介されていた「番屋の湯」に行ってすっかり満喫したちさです。お風呂に入って、休憩所でうとうとして、カピパラを見てご飯を食べて、またお風呂にはいって…幸せです💛
 今週は「ゴールデンボーイ」(1998年)を見ました。監督は「X-MEN」「ボヘミアン・ラプソティ」のブライアン・シンガー。原作はスティーブンキングです。原作小説が収められた「恐怖の四季」という本には「刑務所のリタ・ヘイワース~春は希望の泉」「ゴールデンボーイ~転落の夏」「スタンド・バイ・ミー~秋の目覚め」「マンハッタンの奇譚クラブ~冬の物語」の4編が収録されていて「マンハッタンの奇譚クラブ」以外の3篇は、それぞれ映画化されています(「刑務所のリタ・ヘイワース」は「ショーシャンクの空に」とタイトルが変っています)
 あらすじは優等生の少年が潜伏中のナチ高官と出会い、狂気に目覚めていく…というもの。オープニングは学校の図書館で熱心にホロコーストの事を調べる、ブラッドレンフロ扮するトッド。ブラッドレンフロはちょっと危うい魅力がある美少年です。顔や体は大人になりかけているのに、表情が少し幼いのが魅力です。「バイオハザード2」のCMにも出ていました。
 雨の中、静かにバスに乗り込む老人。トッドは老人に図書館で見た資料に載っていたナチ高官の面影を見つけるのでした。この老人、ドゥサンダーに扮するのはイアン・マッケラン。「X-MEN」のマグニート役でおなじみです。
 夕日が差し込むトンネルを自転車で駆け抜けるトッド。ドゥサンダーの家のベルを鳴らします。こっそり老人の写真を撮って資料と照らし合わせ、郵便受けから指紋を取って手配書のデータベースと照らし合わせた。密告されたくなければ、学校では教えてくれないような、彼にしか話せないような「昔話」を聞かせて欲しいとトッドはせがみます。「何か飲むかね?」とドゥサンダーに聞かれ「ミルク」とトッドが答える場面がかわいらしいです。
ここからトッドとドゥサンダーの秘密の関係が始まります。トッドは学校では先生受けの良い優等生、野球が好きな人気物です。家族からの信頼も厚く、近所の孤独な老人に本を読んであげているという嘘も母親はすんなりと信じます。
「ガス室で死に至るまでの時間は?」「囚人はどうなった?結末を訊かせて?」と無邪気に訊くトッド。嫌々ではあるけれど、ドゥサンダーはユダヤ人狩りの経験を淡々と語ります。彼の昔話は少年には闇が深すぎたのか、トッドはだんだんユダヤ人の幻覚や悪夢を見るようになります。
バスケットボールをした後、シャワーを浴びるトッド。横でシャワーを浴びているクラスメイトの姿が、一瞬頭を丸坊主にされたやせぎすの男に変わる。声を上げると、男の姿は消え、いつの間にかクラスメイトもいなくなり、シャワールームにはトッド一人が残されています。「やるしかなかった」「地獄の門は閉じられない」と淡々と語るドゥサンダーの声と共に悪夢を見て、汗まみれになって飛び起きるトッド。ベッドの中の裸体(なぜか裸で寝ています)がつやつやして色っぽい。この、少しずつ精神が浸食されていく感じがドキドキします💛
そして一月ほどたった土曜日の昼下がり、酔っぱらって死んだように寝ているドゥサンダーに、トッドはピンクのリボンが付いたプレゼントを持ってきます。中身は舞台衣装用のナチの将校の制服でした。
 嫌がるドゥサンダーに「それを来たあんたの姿を見たい。ユダヤ人の苦しみに比べたらなんてことはない」と追い詰めます。「階級章が違う」といいながらもドゥサンダーは制服を身に付けます。痩せた体を包む制服が不思議に色っぽいです。
目を輝かせながら数歩離れた所で腕を組んで彼を眺めるトッド。そして思いつきで「気をつけ」「進め」と行進をするように命令します。
 ここがこの映画で一番好きで、一番ドキドキするシーンです。
 トッドの号令に合わせてドゥサンダーの脚だけが機械的に動きます。タンタンという硬い靴の音と「右向け右」「進め」と矢継ぎ早に命令する声。最初は少し緩慢だったドゥサンダーの動きがだんだんと早くなり、表情が鋭くなっていきます。それと反比例してトッドの表情には戸惑いと恐れの色が見え始めます。すっかり気圧されて命令が出来なくなったトッドに構わず、ドゥサンダーの行進は続き、しんとした中に足音だけが響き渡ります。鋭く敬礼をするデンガー。耐えられずに「やめろ!」と叫ぶトッド。行進は終わり沈黙が続きます。
 ぐったりと壁にもたれるドゥサンダー。呆然と佇むトッドに「気をつけろ坊や、これは危険な遊びだ」と一言。
 ここのシーンはどうしてこんなにドキドキするんでしょう!この数分…いや数十秒かもしれない間で、ドゥサンダーの何かが目覚め、彼らの関係が変っていく気配がするのです。
お互いの狂気が少しずつお互いを浸食していく感じがとっても性的です。この映画も大好きで、多分レンタルするよりDVDを買った方が安いんじゃないかっていうくらい見ているのですが、何回見てもドキドキします。シーンの最後には性行為が終わった後のような空気が流れている気がします…💛
 その夜、デンガーはゆっくりと飼い猫を抱きキッチンへ。オーブンの扉を開けると「猫ちゃん、いい子だ」とデンガーは微笑みます。眠りから覚めたようにドゥサンダーはどんどん狡猾に、狂暴になっていきます。興味本位で近づいたはずのトッドもまた、彼の狂気に飲み込まれていきます。そして、とうとう彼らの秘密が…!
 この映画の原題は「AptPupil」。出来の良い生徒・教え子という意味です。良いタイトルなのに、どうして「ゴールデンボーイ」って邦題になっちゃったんだろう。ラストは原作と映画ではかなり違います。映画の方が怖いけれど、私は原作の方が好き。大好きな小説「蝶々の纏足」の、小鳥を吞み損ねた蛇の死骸が川から流れてくるシーンを思いだしちゃいました。
 女の人はあんまり出てこないけれど、全編にわたって色っぽいシーンが多いです。トッドの裸体のシーンはもちろんですが、家に迎え入れた浮浪者の顔を優しくなでるドゥサンダーの手つきやトッドの肩越しにグラスを掴む腕、点滴の管を確かめるように指を滑らせるドゥサンダー…。不思議な色気があります。どれも死と隣り合わせの場面ですが、見ていると、皮膚を撫でられているような感覚になりぞくぞくしちゃいました💛