056:亀和田武さんの新刊が死ぬほど面白いよ!!

まずは東京方面の読者兄姉に読んでもらいたいお知らせから。
7月7日(火)、永六輔さんの命日に「永六輔さんを語ろう♪」というトークライブがあるのです。場所は北沢タウンホール地下の下北沢小劇場B1。開演は14:00と19:00で、チケット代は全席指定2500円。司会進行はオオタスセリで、昼の部のゲストが「いい旅」でおなじみの奥山コーシンさんなのだよ。「8時だョ!全員集合」とか「シャボン玉ホリデー」「世界まるごとHOWマッチ」「ザ・ベストテン」などなどの放送作家であり、立川談志の弟子であり、立川こしらの師匠であり、なんといっても秋元康の師匠である奥山コーシンさん、81歳とご高齢だし、大病も患ったので、元気な奥山コーシンさんを見られるチャンスはもうそんなにないかも!!(汗)
もし行ける人がいたら「あざらしの代わりに来ました」って言っていいので、よろしくね。


続いてのお知らせ。こちらも「いい旅」でおなじみ、あざらしが敬愛する亀和田武さんの新刊が発売されたのです。ぱちぱちぱちぱちーっ。タイトルは「夢でもいいから」(光文社/1800円+税)。これが、死ぬほど面白かったのだよ。おいらの国では今年上半期のベスト本に決定したもんね。
この本、小説宝石という月刊誌に連載した「夢でまた逢えたら」の約7年分の原稿から著者本人が厳選した24編が収録されているんだけど、単純に「忘れられない人たちのこと」を綴った人物回顧録とは一線を画しているんだ。忘れられない人たちのことを回顧しながら、80年代、90年代のいかがわしいけど熱量が強かった時代の情景を鮮やかに浮かび上がらせたり、自分のことも第三者ではなく常に当事者に位置付けて恥も弱さもさらすことで、一篇一篇が味わい深い上質なエッセイに昇華しているんよ。
そこにあるのは幸福な読書体験だ。よく知っているあの人も、全く知らないあの人も、決して懐が深くはない、むしろ狭量とさえ感じる亀和田武さんの目を通して見聞することで、その人間臭さが愛しくなること請け合いだ。そういえば、亀和田武さんの好きな映画監督はフランソワ・トリュフォーだ。トリュフォーの映画といえば、出てくる男はみんな揃いも揃ってダメ男ばかりだよね。「忘れられない人」って、つまるところはダメ人間なのかもしれないけど、談志師匠の言うところの「業の肯定」。影の部分に人間臭さが宿り、それが人を引き付ける魅力になるのかもしれない。
甲斐よしひろさんが、同じ連載の初期作品を収めた「夢でまた逢えたら」よりも、今回の「夢でもいいから」の方が文章がよくて面白いと賛じていたそうだけど、全くその通りだと思う。同感だ。60歳を過ぎたあたりから、小説はクオリティを保っていても、エッセイが読むに堪えられないほどつまらなくなってしまう作家が少なくない中で、亀和田武さんのエッセイは衰えを知らない。むしろ、どんどん面白くなってきている気さえする。
それにしても少ないよね。38年間作家をしてきて、今回の本で19冊目。まだ19冊目なのだよ。亀和田武という作家が生きた爪痕はそんなものじゃ足りないはず。記念すべき20冊目を海豹舎から出せたらいいなあと思う今日この頃なのでありんす。

今回も最後にとっておきの動画を一本。離陸前の飛行機から撮影した夜の羽田空港なんだけど、これがいいのだよ。飛行機がいっぱいあるので、3分40秒見続けても全然飽きないのだよ。ほんの4か月前の動画だけど、コロナ前の世界って、なんだか遠い昔のように見えるんだよね。いやいや、空港はもうコロナ前にほど近い便数で再開しているのだった。懐かしがってばかりいる場合じゃないか。9月にでも行こうかな、東京。それまでは動画で懐かしむとするよ。アデュー、アデュー。