054:スロースターターのおれだけど

いつも、できない言い訳を探しては逃げてばかりいた。
24歳の時に、すすきのタウン情報の山崎さんが「机も電話も名刺も用意するから明日からここに出社しなさい」と言ってくれた時は子供の病気を理由に断った。
27歳の時に講談社のホットドッグプレス(そのあとデイズジャパン)の編集氏が、「部屋も用意するし、車もおれのを使っていいし、食えるだけの仕事を回すから、今すぐ東京に出てこいよ」と言ってくれた時は嫁さんの病気を理由に断った。
30代のいつだっか、光文社の編集氏から「今度光文社新書を立ち上げることにしたので、温泉の本を書き下ろしてみませんか」という連絡がきた時は嫁さんの介護を理由にうだうだしていたら忘れさられた。
双葉社の佐々木さんにいたっては部署を異動する度に「時代小説を書きませんか」「官能小説を」「あやかしキャラものを」などとチャンスをくれたのに、その都度、なにがしかの理由をつけては一文字も書かずに逃げてきた。
でも、実際の話、いろんなことがありすぎたんよ。去年から今年にかけては死んだ親父の金銭関係、会社関係、女関係、不動産関係などの整理に忙殺されて、7か月連続で無休だったからね。もちろん生きていくための仕事もしないとだめだし、たまに本も作らないとだめだし、毎週ラジオもあるし、このホームページだって更新しないとだめだしってんで「できない理由」は家の中にごろごろしていたんよ。
ところが、どうだい。すべてのものごとには終わりがあるらしく、今年の3月ごろまで呼吸もできないぐらい家中を埋め尽くしていた「できない理由」が、気が付いたらスッキリと片付いていて、足元に5、6個転がっているだけでないの。こいつらだって、真面目にやっていったら年内にはなくなってくれそうだ。ふう。呼吸が楽にできるぞ。ということは、そういうことか。断る理由がなくなってしまったってことか。
怖いな。うれしいはずなのに怖いよ。もう「断る理由」で断って逃げることができないんだもの。ああ、これが気力が充実した30代だったらよかったのに、57歳だもんな。遅いよな。神様も意地悪だよなぁ。とは意外と思わなかったりしてね。始めるとするよ。57歳のおっさんだけど。まだ1文字も書いていない「函館本線へなちょこ旅4」も書きだすし、あれもこれも書くとするよ。佐々木さんから提案された「平安もの」だって逃げずに挑戦してみるよ。これはおいらの引き出し中かきまわしても入っていないジャンルなので死ぬほど難しそうだけど、できない理由を叫んで逃げるのだけはもうやめることにしたよ。
というわけで、スロースターターのおいら、57歳にして、やっと、世間並みの週休二日制ぐらいの自由時間ができたので、その二日間プラス、残り5日から削り取った時間で執筆活動を始めることに決めたよ。なので、当分の間、このホームページは隔週更新にするね。このための時間も少し削り取る次第。次回は6月20日の00:01に更新するので、それまでお別れさ。バイビー。
と、その前に今週も動画を一本。おいらの大好きな空港動画ね。夜の羽田空港を滑走路へと移動する機内から写した2分間なんだけど、いいよ。夜の空港って、キラキラしてていいよね。飛行機もいっぱい出てくるので、コロナショックでまだ空港に近づくのは怖いあんたはこれでも見て旅気分を味わっておくれ。