008:☆青森旅日記2日目~温泉を巡って津軽まで~byひなこ(39歳)

はっと目を覚ましたのは朝の5時30分。よたよたと貸し切り状態の宿泊者専用のお風呂に入り朝食を済ませ、「またね」と温泉蛇口のお湯を触って玉勝温泉を後にします。今日の目的地は「前回行ってまた行きたいと思った温泉2か所」です。
まずは上北駅から40分ほど歩いたところにある李沢温泉に行きました。前回味幸で食事をした時、たまたまカウンターにいたお兄さんに「温泉を巡っているなら、とっても評判の良い温泉が近くにあるよ!」と教えてもらった温泉です。行ってみると温泉水ですっぽんの養殖をしていて、温泉も入れるよ!という所で、カウンターのお兄さんはすっぽん屋さんの人でした。ちなみに味幸と共同開発で作った「兜すっぽん鍋セット」という商品はふるさと納税の返礼品になっており、道の駅おがわらでも売っているとのこと。お土産に買って行こうと思いましたが、5,000円ちょっとと気軽に買える値段ではなかったので今回はあきらめました。
前回は共同浴場に入りましたが、今回は気になっていた家族風呂に入ってみる事にします。看板犬のポンタ(すっぽんのポンでポンタ)に挨拶をすると、まずは温泉の入り口にある電話番号に電話をかけます。「家族風呂? うわ~、今ゴミ捨てに出てるから、今こっちにいないんだわ! 入ったことある? ない! うひゃ~! じゃあB棟っていう所まで行って、前に車を駐められるから…車じゃないの? どうやって来たの? 歩き? 玉勝から!? うひゃぁ~! B棟着いた? じゃあ入ったら箱があるから、お金はそこに入れておいてね! 今から1時間ね、出るときは赤色のバルブを回してお湯を抜いてね。これから1時間ね! ああ~絶対浴室のドアは閉めてね!」という会話の後、いよいよ入浴です。

 

家族風呂はA棟、B棟と書かれた小さなプレハブ小屋になっています。小さな浴槽と人ひとり分くらいでちょうどよいくらいの大きさの洗い場がありました。浴槽の縁からはお湯が後から後から流れ落ちていきます。しっかり浴室のドアを閉めて湯舟に入ると豪快にお湯が溢れ、狭い洗い場はたちまち洪水のようになりました。お湯はすべすべとしたモール泉でとても気持ちが良かったです。出たり入ったりを繰り返しているとたちまち1時間が経ってしまいました。脱衣場には、ちょうど人ひとり寝そべる事ができる畳1畳のスペースもあって、キレイなトイレとコンセントもあります。毛布を持ち込んだら一晩過ごせそうな感じでした。泊まってみたいな……。脱衣場にあった箱に千円を入れて、バルブを閉めてお湯を抜き、李沢温泉を後にしました。

途中、八甲田温泉に併設された八甲田ドライブインという食堂で昼食をとり(ここのお湯は赤くて、体を拭いたタオルが赤くなるんだよ~という事を味幸の店主に聞いていたので気になりましたが、李沢温泉で満足したので、ここは省略しました)上北町駅から2駅先の小川原駅の目と鼻の先にある「姉戸川温泉」に向かいます。

姉戸川温泉は宿泊施設があれば迷わず泊まるのに……と思うくらい居心地が良くて大好きな場所です。女湯と男湯をまたぐようにして、上にパイプが渡っていて、そこから打たせ湯のようにざんざんとお湯が流れ落ちてきます。湯舟は広々とした長方形で、半分は寝っ転がってちょうどよいくらいに浅くなっています。ふんだんにお湯が溢れているので、浅い部分に寝っ転がって浴槽の縁に頬をつけて、お湯が流れる音を聞いているととても気持ちが良いです。すべすべとしたお湯はぬるく、いつまででも入っていられます。昔は寝っ転がれるスペースはなかったけれど、子供連れのお客さんも多かったから半分は埋めたそうです。時々浮き輪をして子供が遊んでいると脱衣場にいた常連さんのおばあちゃんが言っていました。本当に、本当に近所にあったら良いのに…!と思いつつ、今夜の宿の陸奥鶴田に向かうべく再び汽車に乗りました。

小田原駅を11時50分に出て、汽車を色々乗り継いで17時13分に陸奥鶴田駅に到着しました。今夜の宿は陸奥鶴田駅から10分ほど歩いた所にある「山田温泉」です。ここも温泉銭湯と旅館を兼ねたつくりになっています。銭湯側の入り口に、猫がのんびりと寝そべり、傍らには常連さんらしきおばあちゃんが座り込んでいました。「この子はなんていうんですか?」と聞いてみると「わかんないけど、にゃんにゃんだよ~」とにこにこと撫ででいます。なんだか良い所だなぁと思いながらチェックインです。

かわいらしい雰囲気の女将さんは「札幌の人!?先週函館に行ったら、観光客は中国人ばかりでびっくりしたのぉ!」と楽しそうにおしゃべりをしていました。休館と新館があり、選んだのは部屋にお風呂がついている旧館の部屋です。少し広い和室で押し入れの中には、歯ブラシとシャンプーのセットと姿見があります。入り口近くにあった「浴室」と書かれたドアを開けると、脱衣所とトイレのドア、浴室へ続くガラス戸がありました。浴室はヒバ造りで、ひとりで入って丁度いいくらいの小さく四角い湯舟です。蛇口には手ぬぐいで袋がかぶせてあり、茶色っぽく熱いお湯がちょろちょろと流れていました。ミニチュアの温泉みたいで面白いです。ざぶんと入り体を温め、女将さんに繁華街の場所を教えてもらって、夕食を食べに出かけました。

陸奥鶴田駅近くの繁華街を歩いて店を物色していると、繁華街の一本奥の路地に「鶴乃湯」と書かれた営業はしていない様子の古びた銭湯があるのを見つけ、ああっ!となりました。実は陸奥鶴田を目的地に選んだ理由が鶴乃湯でした。町のHPに載っていた、雪の中の鶴乃湯の雰囲気がとても素敵だったからです。「鶴乃湯」と書かれた3階建てくらいのコンクリートの四角い大きながっしりした建物に、二階建ての赤と青のトタン屋根の建物が2つ繋がっています。赤いトタン屋根の建物(二階の窓の様子から、旅館の部分だと思われます)の端っこに「♨IKOINOHEYA」と書かれた入り口があります。脇には錆だらけになった大きなタンクがそびえ立っていました。すごく趣のある廃墟だけど、さみしいなぁと眺めていると「浴場入口」と書かれたドアが開いており、奥の方にかすかに灯りがついているのに気が付きました。入り口をそっと覗いてみると、お客さんらしい人は見えず靴もありませんでしたが、廊下の一部に電気がついています。たまたまお休みだったかもしれないから聞いてみようかと思ったけれど、夕暮れ時の廃墟(かもしれない)は静かで、灯りがついている廊下以外の暗闇がちょっと怖くなったので、声をかけるのはやめて、近くのお店で聞いてみることにしました。
「今年に入って辞めたよ」焼鳥を焼きながら「とりせい」のお兄さんが教えてくれました。ほとんど近所の人しか入りに来なかったし、何やら消防法に引っかかったという事もあり銭湯を閉めたという事でした。やっぱり…と少し寂しくなりながら、焼鳥4本盛とお握りを食べてお店を後にしました。店を出るとすっかり暗くなっている中で、鶴乃湯のでこぼこしたシルエットが見えました。入れなかったのはとっても残念だったけど、いい建物だなぁ、来てよかったと思いました。
2日目はここまでです。エッチな事件はなかったけど、3日目には、いよいよ、かなりエッチな事件が待ち受けているのでした!!