●4日連続で落語を観た話の3日目。あ、今回も敬称略で書きますので、ご容赦を。
亀和田武さんと妹のU子の三人で、神田まつやで軽く腹ごしらえをして(亀和田さんと妹は熱燗で気持ちよくなって)向かったのは日本橋劇場、もとの日本橋公会堂だ。18:30開演の「大古今亭まつり」のチケットを3枚おさえていたので観に行った次第。喬太郎や権太楼など、日替わりでゲストを迎えたりしながら5日間にわたって開催された落語会の最終日なり。
なんとか入手できた席は2階の2列12番。1階の後方よりも舞台に近いようだけど、やはり、落語は上から見るものではないと痛感したよ。せっかく上下(かみしも)を切ってくれても、上からだと動きが小さく見えるので、体温が低く感じられるというか、妙に客観的に観てしまうんよ。寂しい限りさ。
●18:15からの開口一番には間に合わなかったので、そこは謎として、登場順に噺家と演目を紹介すると、まずは昨年9月に真打になったばかりの古今亭駒次改め駒治(40歳)の創作鉄道落語「鉄道戦国絵巻」。東急電鉄とJRの覇権争いを戦国時代に置き換えた噺だ。東横線が密通の果てにJRに寝返った様を戦国武将の浅ましい駆け引きに見立てるくだりに会場大爆笑。枕は師匠の志ん駒の話。なくなったあと出てきた日記の話なんぞ笑っちゃったけど師匠愛が感じられたなぁ。枕4分ぐらい+本編11分12秒=計15分12秒ぐらい(冒頭を聞きそびれたので枕の時間は不明)。
●二番手は、第1回かっぱ寄席に出てくれた桃月庵白酒(50歳)の「お茶汲み」。枕は「いきなり駒治さんが5分余して降りた。だからといってわたしが5分長く話すということはありません。誰かが責任を取るか、ゲストに押し付けるか・・・」なんて話で笑いを取ってから、ぼったくりバーでぼったくられると楽屋で報われる話などなど。廓話なのに湿っぽい色気がないのが白酒のいいところなんだろうね。枕8分53秒+本編15分33秒=計24分26秒。
●続いては本日のゲスト、林家正蔵(56歳)で、志ん生の十八番だった「しじみ売り」。
枕は中学生の時、志ん朝のおっかけをしていた話から入って、大古今亭まつりなのに、新宿末廣亭の正月二之席に出ていた関係で、小三治の悪口が死ぬほど面白かった。小三治が二之席の主任なのに10日間のうち4日間しか出ていなくて、しかも、最終日はネタ帳を見ると、鳳蘭となっている!! 枕だけで降りたのねん。NHKの演芸図鑑で小三治師匠と対談することになった時の話も大爆笑。今宵の正蔵は調子がいいなぁと思って笑っていたら、本編も絶好調だった。10年ほど前に見た時とは比べ物にならないほど格段に腕を上げていた。昔から子供を演じるのがうまいので、「しじみ売り」は正蔵的には得する噺だ。終わっての第一声は「やばい、面白かった」だったからね。この調子で腕を上げていったら落語協会の次期会長を狙えるかも(^○^)。枕7分15秒+本編18分19秒=計25分34秒。
●仲入りのあとは、若手イケメン噺家、古今亭文菊(39歳)の「夢の酒」。枕は「世間はわたしの事を気取ったお坊さんと思っているだろうけど、生まれ持った品があるのでどうしようもないの」で笑いをとって、寄席で寝るのは気持ちがいい話から、前座時代、師匠の円菊を車に乗せるとどうしても眠くなってしまった話など。艶っぽい話が合うんだなぁ。枕7分11秒+本編19分6秒=計26分17秒。
●トリは古今亭菊之丞(46歳)で、古今亭で受け継いできた名作「八五郎出世(妾馬)」。終始笑いが絶えない落語らしい落語だ。テンポもいいし、陰気くさくないし、江戸弁がいきいきしてるし、古今亭の話はいいなぁ。小林信彦さんが「結局、落語は江戸言葉を聴くことに尽きる」と書いていたけど、全くその通りだと思う。
枕は鈴本と同じ「ロクヨン」に出た時の話と、「いだてん」の落語指導の話で始まって、柳家と古今亭の違い、食事の違い、貧富の差の話など、爆笑でした。枕7分58秒+本編30分18秒=計38分16秒。
●最後に出演者全員が登場。といっても全員地味な私服に着替えていたせいか、妙におどおどしていて、登場すると笑いがおこる。SNS用に写真撮影OKということで、各師匠、手を振ってのファンサービスをしていた(3分34秒)。おいらも撮りまくっちゃったよ。最後は三本締めでめでたくお開き。おいらたちは湯島のbarへと移動して、光文社の藤井智やフリースタイルの吉田保、ブックデザイナーの大久保さんらと楽しく飲んだのでした。
●ちなみに、3月20日(水)18:30から日本橋劇場で菊之丞、文菊の兄弟会(全指3000円、2F2800円)、3月29日(金)18:30から歌舞伎座の3Fにある花籠ホールで文菊独演会(お食事とおみやげ付きで7000円)があるとのことです。銀座で食事付きの落語会ってどんな風情なんだろ。興味あるなぁ。