004・・・鹿の谷のミーちゃん〈30秒〉

幌加温泉の鹿の谷といえば、おいらが初めて止宿した頃(もう20年以上前)は雑種犬のチャコが看板犬として、よく二階の廊下を歩いていたものだ。当時は、宿泊客は皆、独り旅でさびしかったのか、自分の部屋のドアはあけっぱなしにするという暗黙のルールがあったので、ドアを開けたままの部屋でごろんと横になっていると、廊下を歩くチャコと目があったりした。自分が廊下を歩くと、知らないおっちゃんと目が合って、一緒に飲もうと誘われたし。懐かしい時代さ。
チャコが不幸な事故で亡くなったあと、梅澤さんは鹿の谷に住み着いている野良猫を可愛がり始めた。可愛がるといっても、触るのはおろか、姿を見ることさえ稀で、エサがなくなっているのを見ては、いつのまにか来ていたんだと気が付く感じね。そんな時代が長かっただけに、超なつっこいミーちゃんが住み着いたことは梅澤さんの人生を大きく変えたようである。そりゃそうだよね。触れるんだもん。梅澤さんに着いて歩いているんだもん。あの日以来、「ミーちゃんが寝かせてくれないから寝不足なのよ」が梅澤さんの口ぐせになった。微笑ましいでしょ。
今年の正月に連泊した折、おいらが片手で撫でながら、片手で撮影した動画なり。