002:四日連続寄席雑記其之一/鈴本演芸場の正月二之席[夜の部]2019.01.16wed


※○○師匠が連続するとうるさくなるので《敬称略》にて書いております。各師匠におきましては平にご容赦を・・・(汗)

演芸情報誌「東京かわら版」を開いて番組表を見ると、おっ。百栄と白酒と喬太郎が出るぞ。これは観なくちゃ!! 仲入り中に白酒師匠に挨拶もできるしね、ってんで、3連泊している御茶ノ水のホテルから歩いて向かったのが、上野の鈴本演芸場なのです。
 正月二之席の夜の部。寄席は10日ずつで一区切りなので、1月10日までが正月初席で、20日までが二之席なんだね。なので、1月も、もう16日だというのに、寄席はまだまだ松の内なので、しめ縄や鏡餅が飾られていたりして。
 木戸銭は2800円也。受付で年間購読している東京かわら版を提出すると300円引きで2500円になる。寄席演芸家の名鑑も作ってくれているし、かっぱ寄席の告知も載せてくれたし、東京かわら版、ありがたや。
 開演17:30なので、ちょっと早く着きすぎたと思ったけど、17:00でもうびっしりだ。さすがキョンキョン。人気あるなぁ。ちなみに、喬太郎師匠は昭和38年生まれ。白髪頭なので老けて見えるけど、あざらしと同学年なのだよ。
 座ったのは「ち-18」。寄席は前から、い、ろ、は・・・なので、「ち」は8列目で、18は一番上手の席。舞台との距離間がほどよい席だ。すぐ前の席は独りで観に来ている落語女子で、一席あけて独り落語男子。あざらしの隣も一席あけて独り落語男子。独り客ばかりだ。前の席の落語女子は髪ばかり触っていて落ち着きがないし、隣の男子は番組表に何やら書き込みながら見ている田舎者だし、斜め前に至っては噺家が演じている最中に何か取り出して読み始めているしで、まともな人間はひとりもいない。それが寄席。恋も友情も100%始まらない。
 受付でもらった番組表の裏には鈴本の近所の三軒の店の広告が載っている。天麩羅の天寿々(JTBの編集者と一度行ったことがある老舗名店)、ハヤシライスが美味しい黒船亭、うなぎの龜屋一睡亭(亀和田さん&妹の祐子と一度行ったことがある老舗名店)。上野のれん会と呼ばれている、上野の文化を支えている旦那衆たちである。
開演の15分前、17:15からマイクなしで前座の開口一番が始まる。
 見覚えがあると思ったら、白酒師匠の弟子の意地悪な方、桃月庵ひしもち(27歳)だった。演目は「子ほめ」。枕7秒+本編12分29秒=計12分36秒。ヘタクソというよりも人間性のつまらなさが落語にそのまま出ていた気がするなぁ。本当はいいやつだったらごめんよ。謝楽祭で意地悪された時に見限ったのさ。おいら狭量につき。
マイクがせりあがってきてのトップバッターは権太楼門下の柳家ほたる(42歳)で、「猫と金魚」。枕2分39秒+本編11分31秒=計14分10秒。下げは「ネズミ年なので」の方じゃなくて、「御覧の通り、濡れねずみです」の方。結構とちっていたけど、何カ所かくすっと笑えた。間がいいと感じた。
二番目は伊藤夢葉の代演で、ゆる~いマジックのダーク広和。14分40秒。相変わらず手品オタク的ないい味を出していたし、最後は「おおっ」と盛り上がった。いつまでも泥臭くならない、いい意味でサラリーマンの副業的な風情を漂わす不思議な人だ。
三番目はさん喬門下で去年の9月に真打になったばかりの柳家小平太(49歳)で、泥棒ネタの「鈴ヶ森」。枕1分43秒+本編14分30秒=計16分13秒。枕の「痩せてるって言ってるじゃないか、このデブ!!」には笑ってしまったよ。
四番目は志ん朝に入門して志ん朝の没後は志ん五の門下となった古今亭志ん陽(44歳)の「たらちね」。枕1分10秒+本編13分30秒=計14分40秒。「お経だよ、それじゃあ」で下げるコンパクトサイズ。ぽっちゃり系の体型を活かした枕のネタ、「志ん陽さん、今日帯してました?」が鉄板。
五番目は正楽門下の林家楽一(38歳)の紙きり芸。12分12秒。正月らしく、おめでたい「馬」で始まって、リクエストは「鏡開き」に続いて、なんと「ボヘミアンラプソディ」。お囃子が「We Will Rock You」で、会場は大盛り上がりのクラップハンド。切ったのはフレディマーキュリーとブライアン・メイの二人だけど、かなりウケていた。「初代ガンダム」や引退宣言したばかりの「稀勢の里」を切っていた。
六番目は出てくるなり「ももえさーん♡」と若い女性の声援が飛んだ春風亭百栄(56歳)の「露出さん」。枕8分28秒+本編10分39秒=計19分07秒。いい噺だなぁ。露出狂の変態おじさんを題材にした斬新な噺。実はかっぱ寄席の第4回目があったら出演は百栄師匠と心に決めていたんだ。亀和田さんも異論なしだ。湯島天神での謝楽祭で会って、少し長めに話したことがあるんだけど、人柄のよさがすぐにわかったんよ。本当なら今年の3月、定山渓で「露出さん」をやってもらっていたはずなのになぁ。かっぱ寄席、また、やりたいなぁ。
仲入り前最後、7番目は白酒の代演で古今亭菊之丞(46歳)の「替わり目」。枕5分40秒+本編9分10秒=計14分50秒。枕はいだてんの話で始まって、柳家さん喬師匠の打ち上げ描写に笑ってしまった。冒頭の人力車のくだりがなくて、代わりに鉄道のレールが出てくる「替わり目」はたぶん初めて観たけど、これはこれでコンパクトでいいものだ。
ここで、お仲入り。白酒師匠に挨拶するつもりで北海道みやげを持参したけど、渡すことができず。ううむ。さっき、某編集部に立ち寄った時もお目当ての御仁は外出中だったし、きっと、今日は運がない日なんだ。きっと、このあとも悪いことが起きるぞ。

仲入りのあとは、まずはホームランの漫才。13分5秒。ホームランを見るのは、これで何回目だろう。ただし、今回は亀和田武さんの大好きなツイストを踊るネタじゃなくて、新作とも思える勘太郎(大きい方/63歳)の師匠(小野ヤスシ)ネタ。ちょっぴり緊張感があって面白かったぁ。ちなみに、この日は、たにし(小さい方)の69歳の誕生日だったんだね。
続いて登場した入船亭扇辰(54歳)は御狐様の駕籠のはなし「紋三郎稲荷」。枕54秒+本編12分53秒=計13分47秒。枕は短くて欲求不満だったけど、ネタは迫力満点だ。お武家や駕籠屋、地語りが見事に演じ分けられていて惚れ惚れした。
トリ前は鳴きまねの江戸家小猫(41歳)。9分20秒。正月らしく一富士二鷹…の鷹の声から始めて、うぐいす、犬、猫、最近定番のヌーの鳴きまねなどでテンポよく笑わせてくれて主任の喬太郎に気持ちよくつないだのはお見事!! 鳴きまねの技量といい、エンタティメントを意識した話術といい、そろそろ猫八を襲名してもいい頃合いだと思ったなり。
主任は柳家喬太郎(55歳)の「風邪うどん」もしくは「うどん屋」。枕11分55秒+本編20分02秒=計31分57秒。
 「待ってました」「たっぷり」の声がかかった。枕は「荒れない成人式」の話から、「荒れるハロウィン」の話題に流れると、これを長めに話して、扇辰との同期話として、前座のころ寄席に出前をとっていた話で爆笑させてくれた。お見事。
終演後、トイレで用を足してから楽屋に行って、喬太郎師匠に手みやげを渡したいと言うと、「もう下に降りてます」ですと。早いなぁ。
 下に降りると、なるほどね。ちょっとした人の山ができていて、見ると、喬太郎師匠、出待ちの落語ガールたちとのツーショット撮影に応じているでないの。
 おいらも北海道みやげを手渡したり、ツーショット撮影しちゃった。むふふ。あと、持参していたDVD「ウルトラセブン落語」にサインもしてもらったもんね。
ショック。鈴本から、富士そばを2軒スルーして、ほかにも蕎麦屋を2軒スルーして歩いて、アテにしていた湯島の夜蕎麦屋に行くと、ぎょえーっ。まだ21:30なのに閉まっているでないの。どこが夜蕎麦だよー。
 慌てて、途中見かけた蕎麦屋に戻るけど、どこも閉まっていて、結局、無駄に歩いただけで、ホテルの並びのセブンイレブン湯島2丁目店で購入した「あさりうどん」430円や「濃厚ごまあんまん」120円が今宵のディナーなり。みじめだぁ。
 やっぱり、今日は悪い日だったよ。まさか、ここからほど近い神保町界隈で沖縄のボーダーインクの新城和博と池宮紀子が楽しそうに食事をしているなどとは思いもしないで、あさりうどんをすすった22:15なのでした。