039:ターニングポイントらしいね

当たり前のことだけど、学校を出たあとは普通に勤めていた。美大予備学院に通う学費を貯めるために始めた夜の仕事にどっぷりとはまってしまい、気が付くと夢破れて三流のデザイン学校に通っていたので、三流のデザイン会社で働き、三流の印刷屋のデザイン部門で働き、三流の広告代理店のデザイン部門で働いてはチラシやメニューや各種業界誌なんぞをせっせと作っていた。でも、どの仕事も違う気がして、最後は三流のビデオ制作会社で映像を作ったりもした。その折、テレビ局に出入りするようになったことが縁で、木村天山という占い師と仕事をするようになった。
今から32年前かその前後。札幌テレビの14:00台の生放送の最中の出来事だ。まだ25、26歳で、生意気盛りだったおいらは生放送中に寄せられる相談希望の電話の多さに番組スタッフが歓喜しているのを見て「これはいける」と踏んで、その場でプロデューサーに交渉したんよ。「木村天山のスケジュール、来週もあけておきましょうか。ただしギャラは倍ということで」。生放送中の舞台裏の喧噪の中、おいらの「交渉」は3秒ですんなりと通ったので、CMに入ったとたん、天山先生の横に走り寄って、耳元でささやいたんだ。「先生、ギャラを倍にするように交渉してますから、もっとガンガン飛ばしてください」。すると天山先生は苦笑いして、こう言ったんだ。「これでも精一杯やってるわよ! それよりも、あんた。こんなところで、こんな仕事をしてていいの?」「へ?」「あんたの仕事はわたしのギャラを倍にすることじゃないでしょ」「え?」「あんたの居場所はここじゃないでしょ!!」
たった5分だけど、STVでやっと自分のテレビ番組も持てて、これから深夜番組でも作って暴れてやろうと考えていた矢先だった。でも、もともとラジオと雑誌が大好きで、それこそ、3人ぐらいですべて作れちゃう世界が好きだったおいらにとっては確かにテレビ制作の現場は何もかも違っていて、違和感を覚えていたので、天山先生がCM中に言った「あんたの居場所はここじゃないでしょ!!」という一言が胸の奥にズシンと響いたのでした。うむむ。つい最近というか、まさしく今、おれ、ターニングポイントという話を少し丁寧に書こうと思ったら、出だしを遡り過ぎちゃって、全然本題にたどりつけなかったや。にゃはは。というわけで、「今おれターニングポイント」という本題へと続く「ホームグラウンドだったすすきのを舞台に暴れまくる話」は来週のココロなのだぁ。アデュー、アデュー。