●全く実感がないけれど、今日と明日で一年が終わるらしい。年の瀬と言うと白い景色の上に雑念を散りばめてまだら模様、というような感じがふさわしいと思うのだけど、今年の札幌は異常気象のようで、雪が積もるどころか、溶けてしまっておまけに今日は雨だった。
こういう異常気象なら大歓迎だけど、冬関係で困ってる人もいるんだろうから、
あんまり大きな声で言ってはいけないんだろうな。
色々なことがあった一年だった。
かといって振り返ってみるほど年越しの実感がないので、今日の出来事を振り返ってみる。
今日は昨日に引き続き子供と一緒だった。生意気にも今日は寝坊したいというので、何時?と聞いたら11時か12時に迎えに来てと言う。寝坊の気持ち良さを6歳にしてもう知っているのだ。どんな自堕落人間に育つか楽しみだ。
迎えに行くと腹が減ったというのでスシローに行った。昨日も行ったけど彼はスシローが大好きだから。
昨日は歳末セールで厚く切った倍トロ100円と言うのを食べさせたが、あまりうまくなかったらしく、目ざとく通常メニューの300円の大トロを食いたいというので食べさせてやる。一体だれがこんな無垢な6才児に大トロなんてものを覚えさせたのだろう。
しかし食べられるものが増えるのはいいことだと思うので、大トロを食わせてやり、他にはうなぎ、海老天、まぐろ、たまご、とびっこなんかを食べていた。
ぼくはなんだか今日とてものどが渇いていたので、茶わん蒸しとサラダを頼んで、イカ耳や蒸しエビを食べた後はコーラを2杯とメロンソーダを1杯飲んだ。
それから今日は遊ぶ時間が12時から18時までの微妙な時間だったので、どこに行きたいか聞くとこの前保育園の時の友達と行ったラウンドワンに行って、遊んでUFOキャッチャーをしたいという。
UFOキャッチャーをしたいというのは昨日も言っていたので、なら金を持ってこいと冗談で言っていたのを思い出して、金は持ってきたのかと聞くと、もじもじしながら「お母さんに言ったらお父さんのお金でいいじゃんって言われたから持ってきてない…」という。
まぁそうだよなと思いラウンドワンへと行く。ぼくはこういうところが大嫌いというか近寄りたくないというか、とても苦手なのだ。人が多いしうるさいし騒がしいからね。
こういうところで遊ぶ楽しみを見出せない人にとっては地獄である。そもそも駐車場からして、もう近寄りたくないオーラがビンビンなのである。
入り口付近の車いすマークの駐車スペースには一台も車いすに関係ないと一目でわかる改造軽自動車とかワンボックスとかファミリーカーが子どもの片づけの途中みたいな感じで並んでいるし、一般駐車場も駐車線なんか気にしないで何も考えずとめましたぁみたいにでたらめに停めた車が邪魔で駐車場が乱雑としていて、つまりそういう人たちが集まるところで、店もそれを放置しているということはそういう会社なのだろう。
こんなにひどいのは旭川の神楽のトライアルぶりだなと思いつつ無法地帯と化している駐車場になんとか車を停めて中へ入る。
ぼくはもう許してくれ勘弁してくれという気持ちだったが、息子は実に楽しそうにスキップなんかしてルンルンなので、覚悟を決めて中に入る。
UFOキャッチャーやメダルコーナーを見て、上に行こうと誘われるままエレベーターに乗ってスポッチャなるものの入口へ行く。入った時から大きい音と無駄な明るさにやられていたぼくは大人の口実をフル活用してそれは勘弁してもらって、UFOキャッチャーして、ほのかに行こうよ、と言った。
彼の6才児なりのゴールデンコースは、ラウンドワンからの、でかい風呂屋のほのからしいので、今日は彼のゴールデンコースに思う存分付き合ってやろうと決めていたのだ。
まだこういう複合施設は早かったみたいなので、早めに切り上げてとりあえず風呂に入って今日はよしとしてもらおうと、この時点で思っていた。
ゲームセンターに入れたのは多分最近オヤジのノアを澄川駅前のパチンコ屋さんの立体駐車場に停めていて、そのついでにエレベーターでパチンコ屋さんに入る機会があり、トイレを借りたりして少なからず大きな音に免疫が付いていたからだろう。
大分不満そうな6才児をなだめながらUFOキャッチャーのコーナーへ行き、クレヨンしんちゃんの犬のシロのぬいぐるみを彼は取りたいというので、やらせてやり、3回目ぐらいで無理だと悟ったのか、小さいぬいぐるみコーナーに行ってうろうろし始め、意味もなく2階に上がり太鼓の達人とかを見て、ゾンビを銃で撃つゲームの前で足を止めたので、これならぼくもできそうだと「やるか?」と言ったら、いつものビビリが発動して、結局1階に戻りトミカが山積みになった崩し系のゲームに3回挑戦してラウンドワンを後にした。
彼がゲットしたのはプラスチックのダイヤ2つだった。
ゲーセンなんて不毛なもんだろ、と言いたいのを抑え、やや機嫌が悪くなる6才児をなだめてほのかへと向かう。後部座席に彼の好きな布団王国を用意してあったので、車に入るとすぐに機嫌が直った。
ほのかの向かいにキャッツアイがあったので、彼にリベンジさせてやろうと思い寄った。ラウンドワンに比べると田舎的な好感の持てるゲームセンターで、そこで彼が一番最初に目を付けたのは100円を入れると回り始める小さな小さな子供向けのメリーゴーランドで、6才児には物足りないんじゃないかと思ったが、今日一番楽しそうに乗っていた。
それから気を良くした彼はワニワニパニックというワニたたきのゲームをして、
満足したのか早くほのかに行こうよう、とぼくをせっついた。
まだまだ子どもだな、メリーゴーランドにワニたたきで満足か。と思いつつ、よかったぁと思いながらすぐ向かいのほのかへと向かう。
さすがに年末のこの時期みんな風呂に入ってせめて、身体はキレイにして年を越したいと思うのか駐車場はいっぱいだった。しかし警備員がたくさんいて車を誘導していたので、ラウンドワンの駐車場のようなことにはなっていなかったので、少し安心して中へと向かう。
中に入ると、ぼくは風呂に入りたいだけなのに、もう料金システムがどうとか岩盤浴がどうとか、館内着がどうとかなにをどうしたらいいのかわからなくて帰りたくなったけど、何度かここに来たことがあるらしい6才児が店の人との間に入ってくれて、岩盤浴はいらない、風呂に入るのと館内着がいる、館内着がなければ何も始まらないというのを伝えてくれて、なんとかロッカーのカギをもらうことが出来た。
風呂は人がいっぱいいたけれど、気持ちよく入れて、6才児の挙動が安定していたので、少し一人で遊んでもらっている間に久しぶりにサウナに入り体の中にどろっとたまった老廃物を汗とともに流せた気がした。
汗を流して水風呂に入ろうとしていると6才児がやってきて、一緒に入ると言って足を水風呂に突っ込んだが、さすがにまだ水風呂は早かったみたいだ。
ぼくはサウナと水風呂が好きなんです。
満足して風呂から上がると、6才児はここからが本番だったらしく、宣言していた通り館内着に着替えて2階にある子どもコーナーへとぼくを連れて行った。
こどもらよここで遊びな、という感じでネット張りの中に軽いやわらかい無害チックな球がたくさん転がっているところや、滑り台なんかがそこにはあって、周りにはちょっとしたゲームコーナーがあり、子どもはそこに放り込んでおけば大丈夫、という感じのところだった。
初めは見てみてー、ボールがたくさんあるー、なんてイノセントに笑っていて、次第にほら見ろおれが滑り台を滑るぞという感じで、ぼくを付き従わせていたが、すぐに自分の世界に入って、まわりの子どもたちと遊び始めたので、ちょっと他のところ見てきていい?と聞くと、ぼくには目もくれず、「わかったあっち行ってて」なんて興味のなくなった元彼に対する態度のようにぼくを扱い始めたので、ぼくは安心してその場を離れた。
あたりをひととおり回ってみて、無料のPCコーナーと言うのがあったので、そこに腰を据える。ぼくはパソコンは持っているけれどインターネットには繋がっていないので、インターネットに繋がっている状態でしかできないことがあったので、
ちょうどいいから今やっちゃおうと思ったのだ。
なにをしたいかと言うと、写真を送ったりするメールをする機会が最近できたので、昔就活に使っていた時に来ていたメールや、今も来るリクルート系のメールをもう来ないようにして全部消したかったのだ。
今年中に片付けておきたかったことが出来たので、こういうところもなかなかいいところがあるななんて思いながら、6才児を見に行くと、新しい友達ができてまだまだ遊びたい、という感じで追い払われたので、いよいよすることがなくなってしまった。
しかし子どもたちが大人抜きで楽しく遊んでいる時に、大人が出来るのは干渉しないことと、見守ることぐらいしかないんだなぁ。きみも大きくなったなぁ、前歯がぐらぐらしてるのを見せてくれたしなぁ。なんて思いつつ意味もなくうろうろしていると、やたらにビールのポップが目につく。しかしぼくは今日車なのでビールを飲めない。ノンアルコールビールでも飲むかと自販機コーナーに行くが、5台も6台も自販機がある割にはノンアルビールはひとつもなかった。
下の階に行っても同じだった。
そこで家族連れでにぎわうボックス席と小上がりしかない食堂的なところへこっそり周りの目を盗んで近付いていき、メニューを見るとノンアルコールビールがあった。しかし中に入ってノンアルコールビールだけ頼む勇気はないので、必殺困った人ビームを人の良さそうな店員さんに向けると、全く効果がなかった。
忙しそうにしてるところ悪いけれど、片づけをしている店員さんに声をかけ事情を説明すると、あっ大丈夫ですよというので注文しようとすると、ぼくハンディ持ってないんで、ここに座っててください、と近くの空いていた8人掛けの席にぼくを座らせ、ピンポンを押して「すぐ人が来ると思うんで」と言いどこかへ消えてしまった。
待てども待てども誰も来ないので、もう一度ボタンを押してみるも、あたりにいる店員さんはみんな忙しそうにしている風には見えないけれどぼくのところには来てくれない。こういうのは慣れてるから、と自分に言い聞かせて、5分ぐらい待ってまたピンポンを押す。
今度は近くまで来てくれたけど、まだ注文を取りに来てはくれない。どうも片づけとか他の配膳とか家族連れの注文取りとか優先順位が明確にあるみたいで、ひとりで8人掛けの席に座っているような、明らかに浮いているぼくは一番後回しの後回しにされているみたいだった。
こういうのは慣れてるから、とまたしばらく待って、暇つぶしにテレビを見てみると年末特番風なのをやっていたけれど、遠くにあったので内容が全然わからなくてあまりいい暇つぶしにはならなかった。
それから5分ぐらいしてまたピンポンを押すとようやく注文を取りに来てくれて、どうやら年末で忙しいし人が足りなくてこういう状況になってるということを説明してくれた。特に待たせて悪かったな、という話はなかったが、こういうのは慣れてるから、とノンアルコールビールの缶が来るのを待つ。
これだけなのでできればすぐ持ってきてもらえたら嬉しいですと精いっぱいのお願いをしたが、返事だけでまた後回しにされたみたいだった。
こういうのは慣れてるから、と自分に言い聞かせて、もう帰ろうかなと思った頃やっとお待ちかねのものが届けられた。もうその頃にはあたりの席は埋まり始めてピンポンのオーケストラが鳴り響いていたので、缶を持ってすぐ席を立った。
お会計はロッカーキー付で帰りでいいとのことだった。
むなしくぐびぐびと一気にそいつを飲み干し、6才児のお母さんと約束していた時間が近づいていたので、遊び場に彼を迎えに行き、魔法の言葉「お母さんが待ってる」を使って新しくできた友達にバイバイしてもらった。
最後どうしてもガチャガチャがしたいというので、今晩缶ビール我慢したらガチャガチャぐらいさせてやれるなぁと思って、300円のガチャガチャをさせてやった。
今日は彼の思う存分好きにさせてやろうという日だったので、これでいいのだ。
それになんとなくではなく、本気でスーパーカーのガチャガチャをやりたがっていたので、子どもなりに好きなものに筋が通っているところにぼくも嬉しい気持ちになり、なにが出るかな?なんて言いながら一緒にガチャガチャをやった。
目当てのホンダのオープンカーを引き当てて、帰り道、後部座席の布団王国でゴキゲンに磨きがかかった6才児は長くもない帰り道で、コーフンしながら楽しかったことの報告をしてくれて、ふと後ろを見ると布団にくるまって深い眠りについていた。
外はまだ雨が降っていた。
彼を送り届け、家に帰り一人カップ焼きそばもやし一袋ぶちこみデラックスヘルシーバージョンを食べ、明日で一年が終わるのにこんなのひとりで食べて終わる一日っていいのかな、学生の時と食ってるもん変わんねーや、なんて思いながら、幸せに年越しを迎える多くの人たちを頭に思い浮かべて、CDを聴いて寝た。
農業見習い中
白木哲朗のエッセイ百番勝負